ケルトに由来する名前

ケルトとは

「ケルト」は、ギリシア語のケルトイ(Keltoi)に由来する言葉で、前5世紀のギリシア地理学者がアルプスより北に住むバルバロイを「よそ者、優れた者」を意味する「ケルトイ」と呼んだことに始まるという。

このケルトイと呼ばれたエリアは、広大で同じ民族だけが住んだとは考えられないことから、一般にケルト文化を共有していた民族群を指して「ケルト人」と呼ぶことは誤りとされる。以降で登場するゲルマン人、アングロ・サクソン人も同様で、複数の民族(部族)を総称する民族的概念である。

ケルト人の歴史

こうしたケルト系の諸民族は、紀元前400年頃にはギリシャ・ローマを除く中部ヨーロッパのほぼ全域に暮らしていたとされる。しかし紀元前1世紀頃に入ると、各地のケルト人は他民族の支配下に入るようになる。

ゲルマン人の圧迫を受けたケルト人の一部は、西のフランスやスペインに移動し、紀元前1世紀にはローマのガイウス・ユリウス・カエサルらによって征服される。やがて500年にわたってローマ帝国の支配を受けたガリアのケルト人(フランス語でゴール人Gaulois)は、被支配層として俗ラテン語を話すようになり、ローマ文化に従い、中世にはゲルマン系のフランク人に吸収されフランス人に変質していく。

ブリテン諸島(現在のイギリス及びアイルランド)にケルト人が渡った時期は不明だが、西暦1世紀にイングランドとウェールズはローマの支配を受け、この地方のケルト人はローマ化した。その後5世紀にゲルマン人がガリアに侵入すると、ローマ帝国はブリタンニアの支配を放棄しローマ軍団を大陸に引き上げた。この間隙を突いてアングロ・サクソン人が海を渡ってイングランドに侵入し、アングロサクソンの支配の下でローマ文明は忘れ去られた。同じブリテン島でも西部のウェールズは、アングロサクソンの征服が及ばずケルトの言語が残存した。またスコットランドやアイルランドはもともとローマの支配すら受けなかった地域であった。

ラテン語ではケルタエ(Celtae)またはガリ(Galli)と書かれ、古代ローマ人からはガリア人とも呼ばれていたが、「ケルト人」と「ガリア人」は必ずしも同義ではなく、ガリア地域に居住してガリア語またはゴール語を話した人々のみが「ガリア人」なのだとも考えられる。

彼らケルトの民族は文字を持っていなかったため、後にガリアを征服したガイウス・ユリウス・カエサル(古典ラテン語:Gaius Iulius Caesar)によって記された『ガリア戦記(ラテン語: Commentarii de Bello Gallico)』などローマ人の書物によって知られるのみで、現在でも詳しいことはわかっていない。※ガイウス・ユリウス・カエサルについては「Julius」の項参照。

ケルトに由来する名前の一覧

  • ウェールズ系

    • アーサー(Arther)語源となったアーサー王については「Arthur」を参照。
    • エドワード(Edward)古英語のead(幸福、富)とweard(守り手)からなる言葉。エドゥアルト、エドゥアルド、エドアルド、エドゥアール、ドゥアルテなどに対応する。愛称はエド、エディ、テッド、テディ、ネッド、ネディ。
    • エドワーズ(Edwars)「エドワードの息子・子孫」を意味する。
    • エヴァンズ、エヴァンス、エバンス (Evans)「Evanの息子」を意味する。このEvanから派生した姓にはIfan(Ivan)がある。
      • ※ロシア語男性名のIvanはJohnから派生したもので、Evanとは関係がない。
    • グリフィス(Griffith, Griffiths)接頭辞Griff(強いグリップ)に接尾辞udd(主)を表すGruffyddが語源とされる。これを英語に写したものがGriffithとなる。
      • ただしGruffyddのバリエーションとしてGrippiudまたはGripuidという言葉があり、この「Grip」はラテン語gryps「グリュプス(英語: griffin=グリフォン、鷲獅子のこと)」を写したものであるともいう。この場合、Grippiudは「グリフォンの王」となり、Griffithも同様の意味を持つということになる。
    • ハリソン、ハリスン(英語: Harrison, Harrisson, Harryson, Harrysson, Harison)「ハリーの息子」(Harry-son)と「黄金の力」の意味を持つ。ハリーから派生した姓には、他に同じくウェールズ系のハリス (Harris) もある。
    • ジョーンズ(Jones、Johns)「Jones」は、ジョンの息子を意味する「John’s son」から生まれた。一方「Johns」はJohnの父称(patronym)から生まれた姓。Category:父称姓 – Wikipedia
    • ウォルシュ・ウェルシュ(Walsh,Welsh)「よそ・外国(ウェールズ)から来た人」という意味。この言葉には、賭け金を払わずに逃げる・借金をごまかすなどの意味もあり、時に軽蔑の意味があるとされる。なおアングロ・サクソン人により外国の人とされたウェールズの人々は、自分たちのことを「Cymry,Cymru」と呼んでいたともいう。
    • ウィリアムズ、ウィリアムス、ウイリアムス、ウイリアムズ(Williams)ウィリアム(William)という祖先の名に由来する姓。ウィリアムのフランス語型であるギルマン(Guillemin)から派生したもので、ゲルマン的要素を持つ古フランス語の名に由来しており、”will”は念願や意志を、また”helm”はヘルメットや防護を意味する。
    • キアラン(Ciaran,Ciarán,Kieran,Kieren)「黒」を意味する。キーラン、キーレン、シアラン、チャーランなどとも。
    • フラン(Flann)「明るい赤」を意味する。
      • フランシス(英語: Francis)、フランチェスコ(イタリア語: Francesco)、フランソワ(François)、フランツ (ドイツ語: Franz)、フランソワーズ、フランキスクス・フランシスクス(ラテン語: Franciscus)などの愛称、略称としても用いられる。
    • ゴヴァン(Gauvain)「白い鷹」を意味する。ガウェイン卿(Gawain)は「円卓の騎士」の1人で、アーサー王の甥に当たる。朝から正午までは力が3倍になるという特性をもつという。「円卓の騎士」参照のこと
    • グウィン(Gwyn)「白」を意味する。グイン。『ゲド戦記』で知られるアメリカの女性作家アーシュラ・K・ル=グウィン(Ursula Kroeber Le Guin)、アメリカ海軍少佐ウィリアム・グウィン(William Gwin)。栗本薫の小説『グイン・サーガ』の主人公。
    • グィネヴィア(Guinevere)「美しき精霊」を意味する。
      • グィネヴィアはアーサー王の王妃となった人物。グニエーヴル、ギネヴィア、グェネヴィア、グィナヴィーア、グウィニヴィア、グインネヴィア、グウィネヴィアなどと表記し、英語ではジェニファー(英語: Jennifer)と派生する。ジェニファーを参照のこと
    • ロイド(Lloyd)「灰色」を意味する
    • マッカーサー(MacArthur)「Arthurの息子」を意味する
    • マーリン(Merlin)「海の要塞」を意味する
    • サリヴァン(Sullivan)「黒い目」を意味する
    • オサリバン、オサリヴァン(O’Sullivan)「サリバンの子孫」を意味する

 

  • スコットランド・アイルランド系

    • アラン(Alan)「(小さな)岩」を意味する
    • ドナルド(Donald)「黒髪または褐色の髪の異邦人」を意味する
    • ダネル(Donnell)ドナルドの変化型
    • マクドナルド(McDonald)「ドナルドの息子」を意味する。米語ではマクダネル
    • ジャック(Jack)ジョンの愛称(短縮型)または聖ヤコブ(ジェイコブ)に由来する。
    • ジャクソン(Jackson)「Jackの息子」の意味
    • マクドネル(McDonnell)「ダネルの息子」を意味する
    • ファーガス(Fergus)「勇者」を意味する
    • ガヴァン(Gavin)「白い鷹」を意味する
    • ケネス(Kenneth)「美しいもの」または「火から生まれたもの」を意味する
    • マッケンジー(McKenzie)「ケネスの息子」を意味する

 

  • アイルランド系

    • アンガス(Angus)ゲール語のaon(=one)とghus(=choice)からなる名前で、「選ばれし者」を意味する
    • ブリギット(Brigit)「卓抜した能力」「強い権威」を意味する
    • ブライアン(Bryan)「高貴な」を意味する
    • バーン(Byrne)「カラス」を意味する。バイアン、バイルン、ビュルン。
    • コナン(Conan)「コナー(Connor)」の派生語
    • コナー(Connor)「猟犬を愛するもの」を意味する
    • コナリー(Connally)「猟犬のように勇敢な」を意味する「Ó Conghalaigh」が変化したもの。コネリー(Connelly)も同じ。
    • クリントン(Clinton)「囲まれた丘に住む人」の意味で、McClintonの短縮形。元はアイルランドの姓だったが19世紀にはファーストネームにも用いられるようになった。さらに短縮形のClintも名前に用いられる。
    • ドイル(Doyle)ゲール語の姓であるドゥーガル(Dubhghall, Dougal, Dougall)の変形。ゲール語で「暗黒の(邪悪な)異邦人」の意味。マクダウエル(MacDowell)も同じ語源。
      • イギリスの作家サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle)が有名。
    • フィン(Finn)「白」を意味する
    • ギャラハー(Gallagher)元はÓ Gallchobhair,Ó Gallchobhoirと書いていたものがO’が抜け落ちたもの。アメリカではギャラガーと発音される。
    • ギネス(Guinness)「アンガスの息子(Mac Aonghusa)」が転訛、省略されたもの(Maguiness,Maginnis,McGinnis,McGuinnessなどとも綴られる)。ギネス・ギールの創業者アーサー・ギネス(Arthur Guinness)はアイルランド・セルブリッジの生まれ。
    • ヘネシー(Hennessy)「アンガスの息子(Ó hAonghusa)」が転訛、省略されたもの
    • ケリー(Carey, Kelly, Kellie, Kelley, Keri, Kerri, Kerry)「好戦的な」を意味する。サーネームとして、また男女ともにギブンネームとして用いられる。映画女優でモナコ公国王妃となったグレース・パトリシア・ケリー(Grace Patricia Kelly)はアイルランド系。女性名は、アイルランドの女神ケレ(Kelle)にちなむともいう。
    • ケヴィン(Kevin)「愛しい・愛らしい」「端正に生まれた」を意味する「Caoimhín」から。フランス語圏ではケヴァン (Kévin) と発音する。
    • マーフィ(Murphy)マーフィー。「Ó Murchadha/Ó Murchadh」(Murchadhの子孫)、「Mac Murchaidh/Mac Murchadh」(Murchadhの息子)というアイルランドの人名「Murchadh」に由来する2つの姓を、英語化したもの。Muirは”海”、cadh は”闘い”を意味する。現代のアイルランドでは”Ó Murchadha”よりも”Ó Murchúが用いられる。アイルランドでは一番多い姓である。
    • ニアール(Niall)「闘士、保護するもの」を意味する
    • ライアン(Ryan)「ライアンの子孫」を意味する「Ó Riain」からの転訛。ただしこのRiainが誰を指すのかはわかっていない。一説には古アイルランド語で「水・海」を意味するともいう。
    • オブライエン(O’Brien)オブライアン。「O’」はアイルランド語で「~の子孫」を意味し、ここでのBrienは10-11世紀のアイルランドの王ブライアン・ボル(Brian Boru)を指す。
    • オニール(O’Neill,O’Neal)「Nealの息子・子孫」を意味する。

 

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