オランダ人の名前

トゥッセンフーフセル(tussenvoegsel)

オランダ人の名前は、「ファン」、「ファン・デン」など、姓の頭に”ファン(van)”や、”ファン・デン(van den)”、”ファン・デア(van der)”などが付くことが多い。

これはtussenvoegsel(トゥッセンフーフセル)という前置詞であり、「van」(ファン、英語でFrom=”出身”の意)、「den」(デン、英語の定冠詞 Theに相当)などがこれにあたる。

※英語圏のミドルネームとは異なるもので、オランダでは名の欄にミドルネームを書く。

オランダの事務的な書類では、tussenvoegselは姓・名とは別に記入する場所があり、電話帳などで見つける場合は、まず「tussenvoegselを省いた姓」で検索し、その後、名前・tussenvoegselで探す必要がある。

オランダにおける10大姓にも、このtussenvoegselを使用する姓がいくつも入っている。

  1. De Jong
  2. De Vries
  3. Jansen
  4. Van de/den/der Berg
  5. Bakker
  6. Van Dijk
  7. Visser
  8. Janssen
  9. Smit
  10. Meijer/Meyer
そもそも日本人が「オランダ」と読んでいる国名は正しくは「Nederland(ネーデルラント、蘭: Koninkrijk der Nederlanden、英: Kingdom of the Netherlands)」であり、「低地の国」を意味する。国の正式名称としては、「オランダ語: de Nederlanden、英語: the Netherlands」が使用され、これは「低地の国々」を意味する。
”オランダ”の語源となったのはネーデルラントの一部ホラント州(Holland)で、このポルトガル表記である「Holanda」が大航海時代に日本へ伝わったものである。このホラントという呼称については2020年、廃止することが発表された。しかし日本語での国名表記については従来どおり「オランダ」を使用すると発表されている。
なお英語圏では通称「Dutch(ダッチ)」が使用されているが、これは元来ドイツ(Duitsch)を指し、その支配から脱した17世紀以降にネーデルラント(人、語)を意味するものに変わっていったことに由来する。

オランダ人の姓の歴史

このtussenvoegsel(トゥッセンフーフセル)は、オランダのナポレオン統治時代に出来たもので、それ以前はアイスランド風の名乗りを使っていた。

このアイスランド風の名乗りは「~の息子」または「~の娘」を名の後ろにつけるもので、これは代々変わっていくため「姓」の概念とは異なる「父称:Patronymic」である。※稀に母称を選択する場合もある。

この頃のオランダ人の名乗りは、例えば「Jan Klaassen(英語では John, Claus’ sonの意)」であれば、”クラウスの息子のヤン”であり、「Marie Jansdochter(英語では Mary, John’s daughterの意)」であれば、”ヤンの娘のマリー”というものであった。つまり自分の父親(母親)の名前を引き継いでいくため、代々変化していく。この他に、Klaas Schoenmaker(英語ではClaus, Shoemakerの意)のように職業やニックネームを添えることもあったが、その場合も息子の職業が変わると変化していた。

しかし、フランス革命後の1793年にネーデルラント一帯もフランス革命軍に占領され、1810年にはフランス帝国の直轄領となっている。この時に戸籍制度が施行されたため、人々は「姓」を固定化し、登録する必要に迫られてしまう。

戸籍登録の際、例えば”クラウスの息子”を表していたKlaassenなどが姓として登録されることとなった。同様に職業を表していたSchoenmaker(靴屋)であったりDe Boer(農夫)であったりBakker(パン屋)、Smit(鍛冶屋)という職業をそのまま姓として使用する人もいた。

オランダ人の姓の例

父称由来の姓(Patronymic surname)

  • Hendriks(英語: Hendrik’s son)「ヘンドリックの息子の」
  • Janssen(英語: John’s son)「ヤンの息子の」
  • Klaassen(英語: Claus’ son)「クラウスの息子の」
  • Peters(英語: Peter’s son)「ピーターの息子の」

出身地由来の姓(Toponymic surname)

van -、van de -、van den -、van der -、Ter -、Ter-などの派生がある。英語では、”from the”または”of the”などを意味している。〔〕内は縮小形。

  • Bos(英語: 森)「森の」
  • Van Amersfoort(英語: from Amersfoort )「アメルスフォート出身の」
  • Van Vliet(英語: from Fliesland)「フリースランド出身の」
  • De Hollander(英語: The Hollander)「オランダ人の」
  • De Vries(英語: The Frisian)「フリースランド人の」
  • Van der Beek(英語: from the creek)「小川・入江の」〔Vanderbeek〕
  • Van der Berg(英語: of the mountain)「山の」〔Vandenberg〕
  • Van der Burg(英語: from the fortress / stronghold)「要塞/砦の」〔Vanderburg〕
  • Van der Hagen(英語: from Hagen)「オランダ南西部の都市Hagen出身の」〔Verhagen〕
  • Van der Hoek(英語: of the corner)「街角の」〔Verhoek〕
  • van der Hulst(英語: from the holly)「ヒイラギ林の」〔Verhulst〕
  • Van der Meer(英語: of the lake)「湖の」〔Vermeer〕
  • Van der Meersch(英語: of the marsh)「沼地の」〔Vermeersch〕
  • Van der Molen/Meulen(英語: of the mill)「風車の」〔Vandermolen/Vandermeulen〕
  • van der stappen(英語: from the steps)〔Verstappen〕
  • Van Leeuwen(英語: )「ルーエン出身の」
  • Van Dijk(英語: of dike)「堤防の」

contraction of Van der – Search results – Wikipedia ※Van derを含む縮小形での検索結果

職業由来の姓(Occupational surname)

  • Bakker(英語: Baker)「パン屋の」
  • Brouwer(英語: brewer)「ビール職人の」
  • De Boer(英語: The farmer)「農夫の」
  • Dekker(英語: roofer/thatcher)「屋根ふき職人の」
  • Meijer/Meyer(英語: steward/overseer,)「執事の」
  • Mulder(英語: Miller)「粉挽き屋/水車屋の」
  • Schoenmaker(英語: Shoemaker)「靴屋の」
  • Smit(英語: Smith)「鍛冶屋の」
  • Timmerman(英語: Carpenter)「大工の」
  • Visser(英語: Fisherman)「漁師の」

身体的特徴由来の姓

  • De Groot(英語: The big)「大きい人」
  • De Jong(英語: The young)「若者」
  • Dik(英語: Fat)「ふとっちょ」
  • ‘t Mannetje(英語: The little man)「小さい人」
  • Naaktgeboren(英語: Born naked)「裸で生まれた人」
  • Vos(英語: fox)「狐のような赤毛の人」「狐ハンター」

著名人

エドワード・ヴァン・ヘイレン(Edward Van Halen)

ハードロックバンド、ヴァン・ヘイレンのギタリスト。オランダで生まれてアメリカに移住した人物で、本名はEdward Lodewijk Van Halen。姓はオランダ語では「ファン・ハーレン」と発音するが、アメリカでは「ヴァン・ヘイレン」と発音されている。

フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent Willem van Gogh)

ポスト印象派の画家。日本を含め多くの国で「ゴッホ」と表記されるが、オランダ人の姓としては正しくは「ファン・ゴッホ(van Gogh)」である。Goghの由来はドイツ西部のノルトライン=ヴェストファーレン州にある町Gochにあり、それがオランダ語ではGoghと綴られる。

レンブラント・ファン・レイン(Rembrandt)

バロック期を代表する画家のひとり。本名はレンブラント・ハルメンソーン・ファン・レイン(Rembrandt Harmenszoon van Rijn)。ラインRhine(オランダ語: Rijn)出身のハルメンの息子、レンブラントを意味する。
父はハルメン・ヘリッツゾーン・ファン・レイン(Harmen (Gerritsz) van Rijn)で、Harmenszoonはその父称形。
なおレンブラントが姓ではなく名で呼ばれるのは彼がそのように署名していたためで、それはルネサンスの巨匠に倣ったものであった。

ヨハネス・レイニールス・フェルメール(Johannes Reijniersz Vermeer)

バロック期を代表する画家のひとり。本名はヤン・ファン・デル・メール・ファン・デルフト (Jan van der Meer van Delft)。
父がレイニエル・ヤンスゾーン・フォス(Reijnier Jansz Vos)であり、父称がReijniersz。父レイニエルは後に姓をvan der Meerへと変えており、”van der Meer”は、海から来たまたは湖から来たことを意味する。その縮小形が”Vermeer”で、画家フェルメールは通常この縮小形で呼ばれている。Delftは南ホラント州の町の名前。

ピーター・ファン・デン・ホーヘンバンド

オランダの男子競泳選手。本名はピーター・コルネリス・マルタイン・ファン・デン・ホーヘンバンド(Pieter Cornelis Martijn van den Hoogenband)。これは英語読みで、ピーテル・ファン・デン・ホーグヘンバントに近い。

マーティン・ヴァン・ビューレン(Martin Van Buren)

アメリカ合衆国の第8代大統領。独立宣言署名後に生まれた最初の大統領であり、最初の非アングロ・サクソン系の大統領であり、第一言語が英語ではなかった(オランダ語だった)唯一の大統領。5世祖父のコーネリスが1631年にオランダから移住した、オランダ系の移民。

マタ・ハリ(Mata Hari)

フリースラント系オランダ人の踊り子(ダンサー)、ストリッパー。第一次世界大戦中にスパイ容疑でフランスに捕らえられ、有罪判決を受けて処刑された。本名はマルガレータ・ヘールトロイダ・ツェレ(Margaretha Geertruida Zelle)。”Zelle”はオランダ系のサーネームで、語源はラテン語のcellaにある。

ヨス・フェルスタッペン(Johannes Franciscus “Jos” Verstappen)

オランダ出身のF1ドライバー。
妻のソフィー・マリー・クンペン(Sophie-Marie Kumpen)はベルギーのカートレーサー、息子のマックス・エミリアン・フェルスタッペン(Max Emilian Verstappen)もレーサー。さらには妻の父ポール・クンペン(Paul Kumpen)や、その子アンソニー・クンペン(Anthony Kumpen)もレーサー。

著名な姓

ルーズベルト、ローズベルト(Roosevelt)

Rooseveltはオランダ系のアメリカ人のサーネーム。オランダ語の「Van Rosevelt/Van Rosenvelt」を語源とし、「バラの野原から」を意味する。2人の大統領を排出したルーズベルト家が著名。「Roosevelt」の項参照。

エジソン(Edison)

オランダ系のサーネーム。Edisonは、Edithの息子を意味する。Edithは女性のギブンネームで、各国語で派生してEdgar、Edgardoなどと変化する。
サーネームEdisonの語源はロトの妻Edithで、古英語で「富」と「戦い」からなる言葉であるという。
旧約聖書でロトと家族は神によって救われるが、逃げる途中に決して振り返るなといわれていたにも関わらず、妻Edithは振り返ってしまったために塩柱にされたという。死海のほとり、ソドム山にはロトの妻の塩柱(英語: Pillar of Lot’s wife)がある。
著名な発明家であるトーマス・アルバ・エジソン(英: Thomas Alva Edison)も、オランダ系移民のサミュエル・オグデン・エジソン・ジュニア(Samuel Ogden Edison Jr.)の子として生まれた。母のナンシー・マシューズ・エリオット(Nancy Matthews Elliott)はスコットランド系。トーマスの曽祖父にあたるJohn Edison UEはオランダで生まれ、未亡人となった母とともにアメリカへ渡った。

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